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ジャガー E タイプ, リアーブレーキのレストア [ E-Type リアー サスペンション]


 ジャガー E タイプのリアーブレーキは、約50年前に既にデスクブレーキを採用していました。

 しかも、下写真(メンテ前の写真)の様にブレーキをデフのすぐ横に取り付けて、 「サスペンションのバネ下重量軽減(軽いと路面の凹凸に対し追随性が良くなる)」 や 「重いブレーキを車の中心に配置し安定感を増す」 等と自動車評論家は理屈をこねそうなレイアウトになっています。
しかし、ブレーキをデフの横に付けるアイデアは整備性の悪さから今ではほとんど採用されていません。

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 何はともあれ、まずはリアーブレーキの分解です。
デフからリアーブレーキユニットを外し、下写真の左側のキャリパーアッセンブリーと右側のハンドブレーキアッセンブリーに分解。
(分解時は細心の注意を払って、悪い所や見て違和感のある所を探しながら行います。 それは、今迄車を使っていた結果として、構造上の強度や性能に問題のある所、以前に組立て,整備をした方の失敗状況を見る事が出来るからです。)

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 キャリパーアッセンブリーは下写真の様にシリンダーのピストンを無理やり90°まわしてあり、ピストンがパットホルダーを押し、ホルダーがブレーキーローターに擦れ、摩耗していました。 前回ブレーキを整備した人の勘違いから来る整備不良です。 ブレーキがキィーキィーいっていたと思うのですが?

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下左写真がローターに擦れ摩耗したパットホルダー。 正規のピストンの位置は下右写真の左側の新品の状態です。 
P8160492のコピー.jpg P8160489_edited-1.jpg


 で、リアー ブレーキ キャリパーを分解、下写真がその構成部品です。

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 分解後、キャリパーのボディはメッキし水素脆性処理をして、金色の耐熱塗装を行いました。
 また、シリンダー,パット,パットホルダー,ボルト 等ほとんどの部品は購入,組付けとなりました。
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次はハンドブレーキアッセンブリーの分解と組立てです。

 下写真がハンドブレーキの構成部品です。 尚、写真にはハンドブレーキパットは写っていません。
写真の様に、ハンドブレーキパットを戻す板ばねの爪が折れていました。 又、ブレーキパットはデフ等から漏れたオイルで劣化し柔らかくグズグズになっていました。
 レバーアッセンブリーは内部にパッドの隙の自動調整機構が入っており、構成部品はカシメで固定されておりました。 内部はグリースがたっぷり塗ってあり全く錆や摩耗は無く、防錆の為の表面処理は塗装で済ます事にしました。

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下写真はレバーの内部で、ブレーキパットの隙の自動調整機構が入っています。
パットが摩耗し隙が大きくなるとレバーの動きが大きくなりラチエット部分の動きも大きくなり、ハンドブレーキを解除した時にラチエット部分の爪がローターを回転させ、自動的に隙を調整する機構です。
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 で下は、左右のハンドブレーキアッセンブリーの組立て完了写真です。
濃いグリーンに見える部分は亜鉛メッキのオリーブクロメートをした部品で、パッドを取付けるブロック状のホルダーとボルト類はベーキング(水素脆性処理)もしました。

bblogP7200507.jpg


 最後にブレーキアッセンブリーとハンドブレーキーアッセンブリーを写真の様に組立てました。
ブレーキアッセンブリーのキャリパーにハンドブレーキアッセンブリーを挿入し、ハンドブレーキパットの板ばね状のリターンスプリングをセットし、2本のボルトで締めつけて完了です。
尚、2本のボルトはハンドブレーキに自由度を与える(加工誤差等を吸収)為の回転軸になっています。

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BPノスタルジックカーショー

おはようございます。

当時のディスクブレーキは大きいですね。
この辺の部品も十分間に合いますから大したものです。
ハコスカはもうブレーキ関係も製廃になりました。
by BPノスタルジックカーショー (2010-09-10 08:01) 

駅員3

記事にすると、淡々と工程が進みますが、色々と試行錯誤の連続なのでしょうね[ひらめき]
また、手がかかっても、上手くいった時の喜びは一塩ですね[ぴかぴか(新しい)]
by 駅員3 (2010-09-10 08:25) 

雅

デフ横にディスクブレーキを配置、初めて見ました。
まぁ、確かにバネ下荷重の低減には有効かもしれませんね。
当時の車は今より車重が軽いですし。
by (2010-09-10 21:13) 

73seven

こんにちは。
彼の地にHispecなるブレーキメーカーが有ります。キャリパーにサイドブレーキが一体化されているものが有り、取り付けに悪戦苦闘しております。今回のブログを拝見し、サイドブレーキの考え方はジャガーがルーツなのだろうなと感じました。
ブレーキのボディは鋳鉄なのですか?脱水素処理が必要って言われてみると納得です。(勉強になりました)
by 73seven (2010-09-11 12:56) 

standardgogo

ジャガーからキコキコと異音を発するワケにはいきませんよね。
ブレーキユニットがデフを挟んでいると色々な問題は発生するんですね。
でもそのこだわりがジャガーなんでしょうね(^^)
by standardgogo (2010-09-12 14:08) 

kotobuki1946

BPノスタルジックカーショーさん
今日産は部品倉庫を改築中の様です。 その為部品点数を削減したのでは? 日本の旧車の砦も崩れるのかも。 残念です。
ジャガーのブレーキとハコスカは同じタイプのブレーキではないでしょうか。
ひょっとしたら使えるかも。

駅員3さん
このブレーキは英国ダンロップ製でそんなに苦労はなかったです。 それは多くの自動車会社や飛行機会社と取引きをしていた英国ダンロップの経験によるものだった為だろうと思います。

雅さん
昔のレースカーなどには結構このレイアウトはあった様に記憶しています。
今はフォームラー等に残っているかも?

73sevenさん
このブレーキは英国ダンロップ製で、飛行機用のブレーキをサイズダウンした物と思います。 当時の自動車用はダンロップ製が主流だったんではないでしょうか。
ブレーキのボディは鋳鉄です。
以前フロントの足回りで、ジャガーのレストア屋さんの工場長に表面処理(防錆)について伺った所、メッキは強度が落ちるから塗装に との事。
メッキでの強度変化は水素脆性以外には考えられず、水素脆性処理は認知度が低い様です。

standardgogoさん
Eタイプは、レースを前提に開発を始めた車だったので、考えられる多くの新機構や従来からいいと言われる機構を取り入れた物と思います。

by kotobuki1946 (2010-09-13 22:42) 

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