ジャガー Eタイプ, デフの組立て その2 (デフのシム調整) [ EーType パワートレイン]
今週は雨や台風で少し暑さが和らぎました。 我が家にとっては恵みの雨。
家庭菜園のナスやゴーヤは大豊作です。 何時もの様に近所におすそ分けが出来ました。
で、本題。
やっと組上がったデフですが、これからが本格的な調整を行う事になります。
まず構造から。 下の絵がジャガーのデフの構造図で、ベアリングのある所全てにシムが入っており、ほとんどのシムは関連しあい、1ヵ所調整すると別の所も調整しなければならない。
一回目の仮組で、ピニオンベアリングのプレロードはジャガーの基準内に調整出来、ギアーのバックラッシュは0.1mmの基準に対し0.15mm程度に調整出来た為、ギアーのかみ合い確認をします。
ギアーのかみ合いは、光明丹(鉛丹)をギアーに薄く塗り回転させるとギアーがこすれ合っている部分のみ光明丹がはげ黒く見えます。 この黒い部分がギアーの歯が当たっている所(以下歯当りと言う)です。
歯当りは、車が加速時や一定速度で走行(巡航)する時に使う歯面(以下ドライブ側と言う)と減速時やバック走行時に使う歯面(以下バック側と言う)の両面を見ます。
1回目の結果
ドライブ側の歯当り 目標 黄緑の菱形が理想的と思います。
バック側の歯当り 目標はドライブ側と同じ様な位置と形です。
1回目の組付けは歯当りが歯先側に寄っていて全く問題外のNGです。
で、最初の絵のピニオンハイトシム(歯当り調整用シム)を 0.13mm増やし再組してみる事に。
2回目の目的は 0.13mmピニオンギアーを動かす事でどの位歯当りが変化するかを見る事です。
勿論このシムを増やすにはデフをほぼ全分解します。 しかも 0.13mmもピニオンの位置を変えるので、ベアリングのプレロード用シムも増やし、ギアーのバックラッシュ用シムも移動します。
で、結果は
ドライブ側 バック側
2回目の組み付けトライアルで分った事は
*歯当りは1回目と2回目の中間ぐらいがちょうどいいだろう。
*ピニオンギアーを動かす事でバックラッシュのシムを2~3割位変化させたのに匹敵する。
(例えば、ピニオンギアーのシムを0.1mm増やすとバックラッシュのシムを0.02~0.03mm右から左に移動させたのに匹敵する。)
で、3回目のトライアルです。
3回目の組付けは、最初のピニオンの位置からすると0.05mm上げた状態で組付ける事に。
今回もピニオンベアリングのプレロードシムやバックラッシュ調整シムを調整し、歯当り確認です。
下写真の様にドライブ側はちょっと外径よりではあるが問題なく、ベストに近い状態に調整出来た。
が、バック側は歯当りが長く、歯先側によった状態。 こんな歯当り、見た事が無い。
ドライブ側がOKで、バック側がNGでは調整のしようが無い。 ギアーの製造不良です。
で、今迄車についていたギアーを、再確認してみる事に。
従来品もドライブ側はほぼ問題ない様ですが、バック側は歯元に強く当り沈んだ状態です。
今回購入のギアーとは反対ですが問題外のNGです。
ジャガーの整備要領書にはバック側の歯当りも説明されていますが、ジャガーの純正ですら不良です。
整備要領書ではカッコよく書いているが実態はこんなものかと思う。
とは言え、自分の車。 部品が悪いからと言って人のせいにしていても問題は解決しない。
どうしたものかと一昼夜デフを寝かして、変化を待つ事に。 漬物と同じ様にうまみが増すはず!
翌々日再確認したが変化なし。 だよねェ~。 鉄が変化するわけがない。
実はこの間どうした物かと思案の一昼夜で、気を取り直してもう一度組み直す事に。
4回目はシムを調整し、更に0.001インチ(0.03mm)ピニオンの位置を上げて挑戦です。
結果、ドライブ側は若干の浮き気味から沈み側に変化。 しかしまだ目標に近い状態で問題なし。
バック側は心持改善されたかも。 しかし、NGの状態には変わりない。
ドライブ側 バック側
という結果で、これで良しとする事に。
その言い訳。
一般の走行では。ドライブ側はゆっくり加速や一定走行が多いので、当然デフから音が出るとうるさい。
しかし、バック側は減速時の音で、デフの音が聞こえるのはゆっくり減速ぐらいで、デフの音を耳にするチャンスは少ない。 と言う事で、バック側はジャガーもアメリカのローカル部品会社も重視していないのでしょう。
日本車は神経質すぎる管理をしているのかなァ~? っと、つくづく思う。
しかし、日本車が世界制覇したのはこの様な少しの異常も見逃さない品質管理にあったんでしょうね。
で、歯当りは良しとして、最初からどうしても調整しきれなかったのがギアーのバックラッシュ。
ジャガーの基準 0.1mmに対し0.14~0.16mm。 出来ればもう少し基準に近づけたい。
アメリカからシムキットなる物を購入して作業してきたが、バックラッシュ用だけ量が少なく、手持ちのシムが底をついたのです。 で、アメリカに購入手配をしたのですが無しのつぶて。
最近の日産の ”Z” のデフでも0.13~0.18mmの車もあり、最悪このままでもいいかな とも思っていました。
所が一昨日、突然アメリカから小さな荷物が。
また、宣伝用雑誌? と思いながら封を切るとバックラッシュ調整用シムが入っていました。
下のインボイスの様に部品代 26.24ドル、輸送費込みで32.16ドル。
もう終わったと思っているデフの仕事。 力が出ない。
少し時間をおいて力の湧きあがるのを待っています。
多分、次回までには気力が湧き、最終レポートが出来るかも。
その時に、自動車会社での組付け方もレポートします。
光明丹は鉛丹とも言われ鉛化合物ですので、体にいい事はなく今は法規制の対象かも?
綺麗な紅色。 非常に細かい粉j状の物で、粘度の高いギアーオイルでといてギアーに刷毛塗りしました。 この光明丹は、私がアメリカにいる時、会社で刷毛にたっぷり付い多分だけもらい、アメリカでSRLのレストアに使い、その刷毛を日本に持ち帰ってまだ使っている次第。 非常に伸びのいい顔料なんです。
余談で、真偽の程は分りませんが、江戸時代の ”おいらん” はこの鉛丹(上記光明丹)を口紅として使用し、鉛白(これも鉛の化合物)をおしろいとして使っていた と聞きました。 江戸時代の ”おいらん” は鉛ずけだったんです。
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純正ですらその状態、大陸の方のおおらかさなんでしょうか?
基本は前に進むので問題ないと考えているんでしょうね。
by 雅 (2010-08-14 09:56)
気の遠くなるような職人技の作業なんですね
新車組み立て工場の職人さんも同じように苦労して組み付けていたのでしょうか?
by 駅員3 (2010-08-14 12:54)
縦の力を横に変えて、尚且つ左右の回転を調整する機構を
最初に考案した人は凄いですよねぇ。
この複雑怪奇なパーツを組み上げるkotobukiさんも凄いです◎
by standardgogo (2010-08-15 00:27)
おはようございます。
熱気が伝わるレポートですね。
自分のクルマだからこそ出来ることです。
ドイツ車と日本車以外は大体そんなレベルです。
by BPノスタルジックカーショー (2010-08-16 07:36)
こんにちは。
私も自分のクルマのバックラッシュ調整しましたが、いいかげんな調整だったのか80キロ位でウイーンという音がするようなしないような・・・
デフオイルに変な金属粉が混じったりはしていないので今更再調整なんて気は起きませんけど、本当はちゃんとしたほうがいいのかもしれませんね。
by OILMAN (2010-08-16 20:30)
こんばんは、コメントありがとうございました。
ご賢察の通り破断面はほぼ水平でバリはなかったので、完全に金属疲労ですね!修理は部品交換ですみそうです…部品あるかなぁ
by 駅員3 (2010-08-16 21:50)
光明丹、久々に聞きました♪
by jinn (2010-08-16 23:15)
雅さん
まさにその通りだと思います。 ドライブとバックの2つを同時に管理すると言う事が出来ないのでしょう。
standardgogoさん
今迄日本製のデフをいじっていましたが、このデフでは初めて見る発想の所も多く、意外と参考になりました。
BPノスタルジックカーショーさん
本当にラフな考え方なんでしょうね。 アメリカにいた時もちょっと目を離すとすぐに大ざっぱになって大変でした。
ドイツ社のデフをいじってみたくなりました。
OILMANさん
バックラッシュが大きくなると言う事はギアーが摩耗したのでしょうかね。
修理屋さんは、よくデフの音でバックラッシュ調整をされますが、発進時や変速時に ”コックン” と言う音がしない場合はバックラッシュだけの調整はギアーの摩耗していない部分に相手の歯先が乗り上げ、かえってうなり音の原因になる事があります。
駅員3さん
やっぱり金属疲労でしたか。 部品交換はちょっと大変な修理作業になるのかもね。
jinnさん
今は面仕上げなどほとんど機械でやってしまいますので、光明丹は使わなくなりましたね。
by kotobuki1946 (2010-08-21 05:44)