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私のルーツはデファレンシャルギアー [日記]

 
 ジャガーのデファレンシャルギアーを分解し終わり、キャリアーの塗装が乾く間、なんとなくセンチメンタルになってしまった。
 
 趣味でデファレンシャルギアーを分解し、組立てるのは今回で3個目だ。
 フェアレディ(SRL311)の時もそうだったが、デファレンシャルギアーの分解組立て作業をする時は特に思い入れが強くなる。 大げさにいえば 「目頭が熱くなる」。



 45年以上も前の事、学校を卒業し、某自動車会社に技術職として入社したつもりだった。

 で、配属されたのはサスペンションを作る工場の検査だった。 現場の検査員だった。
同期入社の人達は現場実習と言われていたそうだ。 同じ現場の作業でも配属と言われるのと実習と言われるのでは大違い。

 で、丸一年を過ぎる頃には同期入社の人達は皆事務所で 「技術職」 として仕事をしていた。
私は相変わらず、製造現場で夜勤もする検査員だった。 日を追うごとに同期のみんなとの差を強く感じ、つらかった。 特に夜勤の帰り、寮の前で朝出勤する同期の人達とすれ違うのがつらかった。
 更に、当時の課長がたまに来ては、「今回のこの改善は何故か?」 と私に質問する。 入社1・2年の現場の検査員迄は情報が来ない。 私は答えられない。 これも辛さを倍加させた。
 
 で、丸2年を過ぎた頃から 「もうこの会社では技術職にはなれないだろう」 と思い、会社を辞める決意をした。 同期の人達と朝すれ違うつらさもあって、会社の独身寮も出た。

 会社を休み 他の会社の面接も受けた。 当時の中途入社にはいい職は無かった。
 でも会社に退職願を出した。 拒否された。
ちょうどこの頃、私が検査をしていたのがデファレンシャルギアーの組立てラインだった。      この頃、調査の為に分解し、組立てたデファレンシャルギアーの数は数えきれない。

会社を辞める辞めないで うじうじ していた頃、一年先輩のUさんから車いじりの楽しさを授かった。
Uさんとは会う機会は少ないが、今でも大事な友達だ。 釣り仲間だ。



 4年目の4月にやっと技術職に就く事が出来た。
 この時は ”なんで私だけ3年も” との思いが強く嬉しくもなんともなかたった。

 入社後6・7年たった頃、市場関係者と全開発部門,全工場の品質関係代表者が集まる会議に参加する様になった。 最年少だった。 自動車のリコール制度が出来る前後の事だった。
この頃になってやっと、現場での3年間の経験や意味が分り始めて来た。
課長がぶらっと来て意地悪と思える様な質問をしていった意味(情報は自分で取る)も分って来た。
しかし、本当の意味と価値が分って来たのは最近だろう。

”3年間の意味” を文字する事は出来ない。
どう表現すればいいのかつたない文章力では無理だ。
でも、この3年間は私のルーツであり、誇りでもある。


 今は、この経験を3年もさせてくれた事、 うじうじしていた時に陰で支えてくれた多くの先輩方に感謝している。 当時、遠ざけていた寮仲間とも楽しく毎月会っている。 有り難い。 


 デフは、一番つらかった頃の部品だし、現場で1人下を向いて検査をしていた頃を思い出し、やっぱり目が赤くなるようだ。

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コメント 8

BPノスタルジックカーショー

おはようございます。

とても良いお話ですね。
今の若い人にも話して欲しいものです。
by BPノスタルジックカーショー (2010-08-04 09:01) 

くっさん。

実務につくようになると、そんな現場研修は出来ないですから、
貴重な経験をさせてもらえたのですね。
僕も今になって、先輩や社外教育で聞いた話の意味が分かることがあります。
その時に教えてくれた先輩や勉強の機会をくれた会社に感謝です。
by くっさん。 (2010-08-04 09:48) 

kenjii

素晴らしい学びを得る事ができたんですねぇ
私にはまだまだ先の事のようです(^^;)
by kenjii (2010-08-04 21:52) 

standardgogo

数え切れない程のクルマの部品にもひとつひとつに思い出が
あるんですね。
さぼてんが見事に水々しく咲きましたね、とても涼しそうです。
Eタイプの絵をアップしましたので、修正希望箇所を仰って下さい。
by standardgogo (2010-08-05 18:25) 

銀狼

「我慢をする」「耐える」という事の
大切さ・尊さを改めて教えられた気が致します。
また、どんな規模の組織の中でも、
きちんと見ている方・評価している方がいるんだ、
という事などは、今の若い人に是非とも理解して
欲しいものだなと思った次第です。
私も貴記事から学ばせて頂きました。
ありがとうございます。
by 銀狼 (2010-08-05 19:03) 

schnitzer

素敵なお話です。
いい年をした私が言うのもお恥ずかしいですが、今の自分を反省です。
ありがとうございます。
by schnitzer (2010-08-07 01:12) 

雅

無駄な仕事なんてないんですよね。
いいお話でした。ありがとうございます。
by (2010-08-07 21:50) 

kotobuki1946

BPノスタルジックカーショーさん
この記事書くかどうか迷ったのですが、書いてよかったかなァ~と今でも思っています。 時代が変わって、今はこんなに長く教育をするゆとりが無くなってしまっていますので、若い方の参考になるかどうか?

くっさん
技術職についてからも時間を作っては、自分の勉強の為に色々なトライアルや実験をやって来ました。
しかし、最近は実務の動きが早くなり、疑問や問題を解決する為の余裕が無くなっています。 なんとなく残念で、こんなにコセコセしていいのかと疑問を持ちます。

kenjiiさん
そんな先の事でもないと思います。 若い時に経験した事がその後の何十年も左右します。

standardgogoさん
イラスト有難うございます。 最高です。
おりを見てサイドメニューに掲載させてください。 
割合部品点数の少ないジャガーでも限りなく要メンテ部品が出て来て、やっている本人が一番びっくりしています。 大半終わったつもりでいますが、これからやらなければならない部品の数を数えると気が遠くなるので、目先の部品だけを考える様にしています。

銀狼さん
多分会社としては、Kotobukiにはこうゆう教育をしてこうゆう仕事をさせよう との教育スケジュールにのっとって流れていた事なんだろうと思います。 ただ、3年間誰も ”実習” と言わなかった事が、口の堅いすごい人事管理だと思います。

schnitzerさん
いい年をして と言う事はないと思います。 私も今でも毎日が勉強の様です。 ただ私の場合は反省が無いのでだめかも。

雅さん
本当に無駄な事はありませんね。






by kotobuki1946 (2010-08-09 07:55) 

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