アルバイト先の面白い仕事, カメラで Eタイプの部品を再製 その1 [クラシックカーの部品を再製する]
クラシックカーのレストア(再生)をしていると部品の購入が出来ず、行き詰ってしまい、結局レストアを諦める方も多いのではないかと思います。
1960年代の車は魅力的な車が多いが、国産車はほとんどの会社で部品供給していません。
T社等は十数年のちょっと古い車ですら部品供給せず、兵糧攻めにし代替えをそくしています。
古い趣のある車は社会から消してしまうのはさみしいし、味気ない。
”若者の車離れ” と言われていますがこの味気なさも1つの重要な要因かも!!!
日産のハコスカ200GTRやフェアレディ(SR311・Z30等)は、多くの部品が購入できる様ですが。
幸い、私のジャガー E タイプはほとんどの部品が手に入り、部品の購入が出来ず頭を抱えてしまう事はありませんでした。 (部品品質の悪さには頭を抱えてしまう事が多いのですが!)
購入できない部品を探して約一年、今回やっと探し当てたのが下写真のリアーウインドーのオープナーです。 この部品はなぜか頻繁に設計変更されており、私の車に合うオープナーの構成部品は購入できませんでしたので、これを再製トライアルする事にしました。
再製を行うのは右記の会社です。 http://www.daiei-press.co.jp/index.html
リアーウインドー オープナーは写真の様に車に付きます。


下右写真の様に現在の部品はクラック(割れ)が入っています。
今回ウエーザーストリップ等を交換するとより多くの力がかかると思われ、再製に当たっては出来る限り外観を変えず、設計的に弱そうな部分を強化しようと思っています。


で、例の2眼レンズのカメラで3次元撮影をします。
![IMG_0731[1].jpg](https://hisashi1946.c.blog.ss-blog.jp/_images/blog/_6a2/hisashi1946/IMG_07315B15D.jpg)
私の部品はメッキされており、光が反射し正しく撮影できませんので、白い造影剤(艶消し塗料の様な物)を塗ふし、撮影台に乗せます。
撮影台の上の多くの白い点は測定の基準となる物で、任意に最低3個以上設定します。
色々な角度から撮影(測定)した画像からコンピューターが自動的に基準点を探し出し、基準点を重ね合わせ、一方向からでは影になり見えない部分も他の方向からの画像で補い、どの方向から見ても現品と同じに見える画像に組立てていく基準です。

で、撮影開始。 撮影中はどの様にカメラに写っているかをコンピューターで確認できます。


今回は19回撮影し、コンピューターが画像合成しました。
この部品ですと19回も撮影する必要はなかったのですが、たいした時間がかかるわけでもなく。
下が撮影し終わった画像です。
今回の部品は撮影台上で見て、上面と下面は対象で、下面側の画像のアレ(ノイズ)は無視します。
この画像が0.03~0.05mmの誤差で測定出来ているとは思えませんが、これが出来ているんですねェ~~~!!!!!

ここ迄の測定(撮影)で、機械のウォームアップも含めて約30分です。
もし、電子図面(CADデーター)があれば、この画像と電子図面のデーターをドッキングさ、実際の部品が図面の標準値からどれ位ずれているか測定できます。
CADデーターとのドッキングは http://hisashi1946.blog.so-net.ne.jp/2010-01-18 を参照方。
今回の部品は図面がないので、撮影したデーターから図面を作成していきます。 と同時に下の例の様に弱い部分の補強や形状変更も可能です。

で、出来あがったヒンジ先端の図面です。
(この部品の亀裂の最大原因は強度不足かも? しかし、亀裂の起点となったヒンジピン取付け部の付け根の形状が鋭角だった為、鋭角部に荷重が集中し亀裂が発生したと思う。 ちょうど木をしならせてナイフで切り込みを入れると簡単に割れるのと同じ様にヒンジピンの付け根に力が集中した。
従って、下写真の様に荷重が集中しない様付け根部に丸み(R)を付け、荷重の分散をはかります。)

次いで車のボディへの取付けフランジの形状出しをして、補強の為板厚を1mm増やし、更に取付け穴を付けて完成。 実は車への締め付けでフランジが歪んでおり、ヒンジピン側との整合性を付けるのにちょっと苦労しました。


で、最後に異常に歪んだ面や図面上で不整合な面が無いか等を確認する為、画面を鏡面加工状態にしてみます。 もし曲率が異常だったりすると縞模様が歪んで見えます。

以上で、部品の測定と図面化は完了です。 図面らしい数値のない単なる絵なのに!!!
この部品曲面が多いので、従来の紙の図面にすると数値がぎっしり書かれた物になるでしょう。
この後は、この図面から切削加工の為の電子図面を製作していきます。
ここ迄で3時間程度。 何時も撮影・測定をしているアルバイト先のYさんが実施してくれました。
部品やツール・プレス型等の再製の問い合わせは下記
http://www.daiei-press.co.jp/html/page03_4.html

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展示会で見たことがありますが、便利な機械ですね。
使いこなすのが大変そうでもありますね。
by mitu (2010-03-16 19:55)
全くわかりませんが、上手く出来上がるといいですね。
by ガンバルおやじ (2010-03-16 20:02)
おはようございます。
これはお願いしたいものがありますね。
是非、ショーに出て頂きたい!!
by BPノスタルジックカーショー (2010-03-17 07:10)
いやー、この撮影から図面…といっても私のイメージしている紙の図面とは掛け離れていますが…が出来上がっていく様子に、ワクワクしながら魅入ってしまいました。
レストアで、無い部品は作るか、流用するしかないのですが、こんなふうに部品が複製できると、いろいろな可能性が生まれますね
by 駅員3 (2010-03-17 07:44)
すごい技術ですね~
あまりの誤差の小ささに驚きです!!
by jinn (2010-03-17 12:56)
機械を操作するだけで簡単に図面化できるんですね~。
新興国の自動車メーカーがこれを使ったら・・・。
by kanican (2010-03-17 21:48)
ご無沙汰しておりました。
Eタイプが出来た頃は当然3D-CADなんてありませんから、
後加工で個体別に寸法合わせしていたのでしょうねぇ。
3Dになって、ごまかしがきかなくなったのは辛いです。
by GOP (2010-03-18 08:55)
学生のころ夢見てた映画の中のお話のようですね。
リバースエンジニアリングですか。勉強になります。
カッコいいです。
そのうち私たちの身体も創れちゃいそうですね
by Masayuki (2010-03-18 15:35)
驚きました。すごい技術ですね。
この方法でパーツの複製を作ることができるなら、レストアもどんどんはかどりますね。
by ベアトラック (2010-03-20 08:47)
こんにちは。
部品が無くなった時がクルマいじりの限界と思っていましたが、今後こういう機械が市場に多く出回ってくれると気軽に頼んでいけそうですね。
・・・まだまだ先でしょうか・・・
by OILMAN (2010-03-20 23:06)
mituさん
確かにコマンドが多く、どのコマンドを使うと何が出来るのか覚えるのが大変です。
ガンバルおやじさん
本当に優秀な技術者は難しい事でも やさしく誰にでもわかる様に説明するのですが、私はまだまだですね。
BPノスタルジックカーショーさん
何度も今年は参加したいと言っていましたが、昨年の病気でだいぶ遅れた事や何より予定していた車を搬入する車両が使えなくなり、非常に残念ながら参加できません。
申し訳ございません。
駅員3さん
やっている私もワクワクです。
実はこの技術、部品だけでなく固体なら何でも図面化できます。
jinnさん
ずいぶん昔は0.1mmが限度でしたが、今は精度が上がって実用化に耐える物になりました。
kanicanさん
確かに新興国の方がこの機械を使うと何でも複製できますが、機械の値段が高く、メンテナンスも大変なので新興国での普及はまだ先かも?
車の部品の模造品はもう2・30年前から多数出回っています。
GOPさん
本当にEタイプは出来あがったボディに合わせ周辺部品を作っていた様ですね。
多分当時は、日本とは品質管理の思想が違っていたのだろうと思います。
しかし、今はイギリスの様な現物合わせ的なやり方は立ち行かなくなってきています。
masayukiさん
前回のこのカテゴリーで、人の顔を製作した記事を取り上げました。 機械の大きさが大きい物なら体全体も取れます。
http://hisashi1946.blog.so-net.ne.jp/2010-02-24
某大手商社には、警察から不明死体の体のデーター化の話が持ち上がっているそうです。
ベアトラックさん
レストア作業のスピードは上がりませんが、部品が無くて中断や諦めはなくなりますね。
OILMANさん
車いじりは部品が無くなるのが心配ですね。 この方向が旧車いじりの救世主なればと思います。
by kotobuki1946 (2010-03-21 09:57)